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再生農業に転換する際、既存の機械・施設をどう活かす?投資判断のポイント

Tags: 再生農業, 機械, 施設, 投資, 経営

再生農業への転換をご検討いただき、誠にありがとうございます。長年の慣行農法で培われたご経験をお持ちの皆様にとって、新たな農法への挑戦には様々な疑問や不安が伴うことと存じます。特に、これまで蓄積されてきた機械や施設といった資産が、新しい農法でどのように扱われるのかは、経営上の大きな関心事の一つではないでしょうか。

この疑問に対して、再生農業の基本的な考え方に基づき、既存の機械や施設をどのように捉え、活用していくべきか、そして新規の投資判断をどのように行うべきかについて解説します。

再生農業における機械・施設の基本的な考え方

再生農業は、土壌生態系を回復・強化することに主眼を置いた農法です。主な実践要素としては、以下のような点が挙げられます。

これらの原則を実践する上で、慣行農法で使用してきた機械や施設がそのまま使える部分もあれば、使用方法の変更や、場合によっては新規導入が必要になる部分も出てきます。しかし、全ての機械や施設を一度に買い替える必要はありません。多くの既存設備は、工夫次第で十分に活用が可能です。

既存の機械・施設はどこまで活用できるか

機械の活用について

トラクターや収穫機、運搬機、防除機など、汎用的な機能を持つ機械の多くは、再生農業でも引き続き活用できます。ただし、使用方法や頻度、あるいは求められる機能が変化する場合があります。

施設の活用について

倉庫、事務所、貯蔵施設、乾燥施設などは、再生農業でもそのまま活用できます。栽培方法の変化が直接的に施設の構造や機能に大きな影響を与えることは少ないでしょう。

必要な改修や新規導入、投資判断のポイント

既存の機械・施設を活かすことを基本としながらも、再生農業を本格的に実践するためには、一部の改修や新規導入が必要になる場合があります。

改修や新規導入を検討するケース

投資判断のポイント

新規の機械や施設に投資するかどうかの判断は、慎重に行う必要があります。

  1. 再生農業の目的との整合性: その機械・施設は、目指す再生農業の目標(土壌改善、収益向上、作業効率化など)にどのように貢献するのかを明確にします。
  2. コストと期待される効果: 導入にかかる初期費用、維持管理費、燃料費などのコストと、それによって得られる効果(作業時間短縮、収量安定、品質向上、資材費削減など)を比較検討します。長期的な視点での効果を評価することが重要です。
  3. 既存設備との連携: 新しい機械・施設が既存の設備と連携してスムーズに運用できるかを確認します。
  4. 段階的な導入: 一度に全てを揃えるのではなく、最も効果の高いものから段階的に導入することを検討します。不耕起播種機のような高価なものは、まずは一部の圃場で試したり、共同利用を検討したりするのも良い方法です。
  5. 情報収集と試算: 実際にその機械を使っている他の農家から情報を収集したり、デモンストレーションに参加したりして、実際の使用感や効果を確認します。自身の経営規模や作物体系に合わせた具体的な導入効果のシミュレーションを行います。
  6. 補助金・支援制度の活用: 再生農業や環境保全型農業に関連する補助金や支援制度がないか情報収集し、活用を検討します。

まとめ

再生農業への転換において、これまでの慣行農法で培われた機械や施設は、多くの場合、そのまま、あるいは工夫次第で十分に活用が可能です。特に汎用的な機械や施設は引き続き重要な役割を担います。

一方で、不耕起栽培など、再生農業の核となる技術を導入する際には、不耕起播種機のような専用の機械が必要になることもあります。これらの新規投資については、単に機械の性能だけでなく、自身の経営目標や再生農業の具体的な実践計画に基づき、コストと期待される長期的な効果を慎重に比較検討することが重要です。

まずはできることから既存の設備を活用し、段階的に必要な機械や施設を導入していくことをお勧めします。地域の普及指導機関や再生農業の実践者、機械メーカーなどから幅広く情報を収集し、ご自身の経営に最適な投資判断を行ってください。皆様の再生農業への挑戦を心より応援しております。